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2017/04/03

神職の辞令いまむかし

 検索ワードで「神職の任用辞令 書式」というのがあって、興味がある方がいるのかなと思って記事にする次第です。
 実物について説明すれば一目瞭然、私の任用辞令を例にしますと以下のようになっています。

①某神社権禰宜・氏名
②北海道北見市相内町
③相内神社宮司に任ずる
④平成二十九年四月一日
⑤神社本廰

 縦書きになっていて、④の中央あたりに神社本庁のハンコが押してあります。①は宮司に任ぜられる前の職、氏名。⑤は中央よりやや下寄せです。なお③が一番大きく書かれています。

 他に神職(神主)が持っているモノとして大きなものには、級位証と階位証があります。

 級位証は2級以上の人(2級・2級上・1級・特級)が、その級位を得たときにいただきます。つまり3級以下(3級と4級)は発行されないのです。私は3級ですので、持っていません。

 階位証の方はいわば神主の免許証のようなものなので、誰でも必ず持っています。上から「浄階」「明階」「正階」「権正階」「直階」の五つがあります。

 一般向けの神社・神道の書籍で、この階位をピラミッド状に書いているものがよくあります。でも、「権正階」「直階」を持つ人の数より、「明階」「正階」を持つ人の数の方が多かったと思います。実数をきちんと確かめた訳ではないですけれど。

 この書式は、恐らく明治以降戦前までの辞令を、ほぼそのまま踏襲しているようです。

 では、さらに以前、江戸時代はどうだったかと言うと、神祇官という朝廷のお役所の次官を代々勤める吉田家が、「神道裁許状」というものを出していました。一例をあげると、こんな感じです。

○○国○○郡○○村○○神社之祠官○○何とかの守○○
恒例之神事祭礼参勤之時、可着風折烏帽子狩衣者也
神道裁許之状如件

○○年○月○日【朱印】
神道管領長上卜部朝臣○○【花押】

 住所と神社の名前、裁許状を受ける人の氏名をあげ、「いつも行う神事・祭礼のとき、風折烏帽子と狩衣をつけなさい。神道裁許の次第は以上」くらいの意味でしょうか。

 「神道管領長上」は神祇官の副官のうち最上位という肩書き、「卜部」は吉田さんの本姓、「朝臣」は朝廷にお勤めしていますよ、ということです。また「花押」は今でいうサインのようなものです。

 吉田家は独自に○○守(加賀ノカミ、陸奥ノカミ、長門ノカミなどなど)という名称を各国の神主さんに与えていました。これを吉田官と言います。センエツながら、もし私がいただけるなら伊豆守がいいです。その暁には伊東温泉に入って、修善寺温泉に入って、湯ヶ島温泉に入って、蓮台寺温泉に入ってミソギをすませ、神事に臨みます。

 冗談はともかくとして話を元に戻すと、「風折烏帽子」はカブリモノ。烏帽子の上部が折れた形になっています。これは現在、神職がかぶることは通常、ありません。「狩衣」は小さめのお祭りや各種ご祈祷などで、よく神主が着ています。

 裁許状がないと、このふたつ、つけることができなかったんですね。また、裁許状を得るには、お金が必要だったと聞いたことがあります。なかなか昔の神主さんも大変だったんですね。

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