万葉集巻第一より
【八番歌】
【八番歌】
熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
【研究】
【研究】
「今は漕ぎ出でな」の「な」に注目したいと思います。この「な」は終助詞。辞書をひくと、①禁止、②勧誘・希望・決意、③感動・詠嘆の三種類の意味があるといいます。「漕ぎ出でな」の「な」は、②の勧誘でしょう。
では、現代語ではどうでしょうか。以下の「な」を見てみてください。
①「絶対に忘れるな」
②「また行きたいな」
③「こんなはずじゃなかったのにな」
①から③のそれぞれに合う用例が見つかります。現代語でも、そう意味は変わらないといえます。
つづきまして、祝詞作文にどう「な」を活かすか。
①は現代語そのままの発想でいけます。
②でしたら例えば、「伊勢に参らな、大神宮を拝み奉らなと思ひ計りて」などと「な」をつかうことができます。ただ、意志の助動詞「む」や、願望の終助詞「ばや」を用いて「伊勢に参らばや、大神宮を拝み奉らむと思ひ計りて」などとする方が、自然に見えるかもしれません。
③は小野小町の歌「花の色は移りにけりな」の「な」ですから、季節の移り変わりを描写するときにつかえそうですし、神葬祭詞や慰霊祭祝詞でも「千年に坐さな、万年におはさなと思ひ頼めりしを」や「歳月のかくも早く流れなと呆れ過ごす間に」、「ありし日はさもあらなと心づくしの御饌つ物を調へ献奉りて」など、いろいろな場面でつかえそうです。
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