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2017/07/06

祝詞語彙7

万葉集巻第一より

【七番歌】
秋の野の み草刈り葺き 宿れりし 宇治のみやこの 仮廬し思ほゆ
〇宿れりし……「り」は完了、「し」は過去の助動詞。

〇思ほゆ……「ゆ」は自発の助動詞。

【研究】

「思ほゆ」の「ゆ」に注目したいと思います。辞書や文法書類には、上代の助動詞として「ゆ」「らゆ」があり、「ゆ」は「る」、「らゆ」は「らる」に相当するとあります。

 ここでは、できるだけ上代の語彙を用いて祝詞をつくりたい、と考える人のために、「ゆ」「らゆ」についてまとめておくことにします。

 まず意味は、以下の三つ。

①自発(自然に……する、……せずにいられない)
②可能(……することができる)
③受身(……れる)

 なお、②は打消や打消推量の助動詞などをともなって、「……することができない」という文脈でつかわることがほとんどです。「る」「らる」には、これら①~③の他に尊敬の意味もありますが「ゆ」「らゆ」に尊敬の意味はありません。

「ゆ」と「らゆ」は、上にくる語が異なります。「ゆ」の上には四段、ナ変、ラ変の動詞の未然形が、「らゆ」はそれ以外の活用をする動詞の未然形がきます。

 文献を見るかぎり実は「らゆ」、「寝らえぬに」のように「寝ることができない」という意味でしか、つかわれていません。もっとも、確認できないだけで「ゆ」とたがいに補いあうように使われていたはずだ、と考えて、祝詞をつくるときにはこだわらなくてもよいのではないかと思います。

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