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2017/04/04

『神職奉務心得』より

『神職奉務心得(資料集)』(神社本庁編)という小冊子があります。いわば神職(神主のことと思ってもらってよいです)の心がけを新旧さまざま、集めたものです。

 神職養成課程の学生のときに、いいなあと思って生協で買い求めたのですが、その後、実習の際にわたされ、さらに以前神職だった方が引退するときにも一冊いただき、あれよあれよといううちに三冊も手元にあります。ちゃんとやれ、という神様のメッセージなのでしょうか。

 それはともかくとして今日は、その冊子の最後にあるものを、ご紹介します。耳の痛いこともけっこう書いてある(なんて言っちゃいけませんね)のですが、現代文で(資料集の多くは古文)読みやすく、読んでいると襟をただそうという気持ちになります。

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 昭和五十一年、岐阜県神社庁で発行された『神職手帳』所収。
 岐阜県神社庁教学委員会では、昭和五十年、神社本庁に中央研修所が開設された機会に「神職の奉務心得」の作成を手がけ、『神職手帳』はその成果。
 
   総則
 神社本庁は神宮を本宗として、神祇の恩徳を奉戴して、神社の興隆を図り、斯道の宣揚に努めて道義を作興し、もって人類永遠の福祉に寄与することを目的として、全国神社の総意に基いて設立された。
 この本庁設立の精神を体し、神明に奉仕する神職は、神社の特性及び伝統を尊重して、各々その本分をつくさなければならない。
 そのため神職が平素心得べき要件は、次の通りである。
 一、神職たるの品性をたもち、氏子崇敬者の師表となること。
 二、常に国典を修め、徳性を養ひ、行学一致を心がけること。
 三、心身の清浄を期し、祭祀を厳修すること。
 四、神意を奉戴し、社会教化につとめること。
 五、社殿境内の尊厳保持につとめ、社務の処理に適正を期すこと。
 
   第一章 品性の保持
 神職は常に清明心を養ひ、正直を旨とし、礼儀を重んじて、品位を保持し、その体面をけがすやうなことがあってはならない。
 そのために平素左の事項に留意しなければならない。
 一、職務に対しては、表裏なく精励すること。
 二、人に接するに懇切丁寧を旨とし、言語を慎み、謙虚な心を忘れないこと。
 三、服装は清潔にして、人に嫌悪の感を与へないこと。
   白衣を着用する場合には、特に次の事項に留意すること。
   1、白衣の下重ねに異色の衣服着用を避けること。
   2、白衣にて外出の場合は、道中用の羽織袴を着用すること。
   3、白衣にて品位をきずつけるやうな行為をしないこと。
 四、常に行動に責任を持ち、祭典時間等の約束を守ること。
 
   第二章 行学の研鑽
 神職は常に神社神道の道一筋を心がけ、平素国典を修め、言霊信仰の尊さを体得し、行学一致の実を挙げるため、左のことに努めなければならない。
 一、肇国の神勅を奉じ、神代を今によくその気を養ひ、神典及国史国文を研鑽すること。
 二、潔斎を重んじ、心身の練磨に努めること。
 三、日夕神前の奉仕に励み、神気の体得に努めること。
 四、奉仕神社の由緒及伝統を究め、御神徳の宣揚に努めること。
 五、神職の研修制度にもとづき、常に斯道の研修に努めること。
 
   第三章 祭祀の厳修
 祭祀は神明に誠心誠意を捧げ、神威を畏みて神徳に神習ひ、神の御心を我が心とする、神人合一の境地を顕現することである。
 従ってこの祭祀を行ふに当っては、斎粛恭敬を旨とし、左の事項を大切にしなければならない。
 一、清浄と斎戒を重んずること。
 二、祭祀は神社本庁の定める祭祀規程に則り懈怠なく奉仕すること。
 三、祭式は神社本庁の定める神社祭式及行事作法の習熟に努めること。
 四、祭祀の服装は神社本庁が定める規程を遵守すること。
   尚、服装は身分により制定されて居るが、左の場合は特に注意すること。
   1、二級以上の神職身分を保有する者が、他の神社の禰宜以下の職員を兼ねて居る場合、その兼務神社においては、宮司の身分と同等以上の身分を表示する服装は自粛して使用しないこと。
   2、他の神社において助勤する場合における助勤神職の座位は、原則として助勤先神社の神職の次であるべきである。従って前号及び本号に該当する場合の祭祀服装は、斎服又は浄衣を使用するを適当とする。
 五、祭祀を奉仕する場合、服忌の心得を厳守すること。
 
   第四章 社会の教化
 神職は氏子崇敬者に接しては、常に敬神生活の綱領の普及と実践教化に努めなければならない。
 社会活動の具体的な目標は左の通りである。
 一、神恩に感謝し、つとめて神社に参拝せしめること。
 二、崇敬のまことを捧げ、社頭の繁栄につとめしめること。
 三、神棚をまつり、家庭の祭祀を行なはしめること。
 四、氏子総代会の活動を活発ならしめ、神社単位の子供会、青年会、婦人会等の育成に努めること。
 
   第五章 社頭の実務
 神職は社頭の維持管理に当り、法令、庁規、規程、規則の定めに従ひ常に氏子崇敬者の信託と協力を得て、神社の尊厳を保持し、神徳の昂揚に努めなければならない。
 そのため日常の奉仕には左の点に留意しなければならない。
 一、社殿及境内の清潔修理に注意し、神社の尊厳保持に努めること。
 二、境内の森厳を保持するため、常に樹木の管理に努め、風致を害することのないやう注意すること。
 三、火災盗難等の予防並に施設工作物等による危険防止については万全を期し、予め取締方法を定め、常に警戒を怠らないこと。
 四、神社の土地、建物、宝物、貴重品、古文書等については、常に管理保存に努めること。
 五、神社の法定書類を整備し、特に金銭物品の出納に関しては、会計収支を明確にし苟しくも公私を混淆してはならない。
 六、神社財産の造成を図ると共に、所属山林については、保護植栽を懈らないこと。
 
   第六章 道義と制約
 神職は常に、神職としての道義を守り、制約に従ひ、その本分を全うするやう努めなければならない。
 その主たる事項は次の通りである。
 一、神職は奉仕神社の所在地附近に居住するを原則とするも已むを得ざる遠距離の場合は、常に通報連絡の出来る措置を講じて、奉仕に支障のないやう留意すること。
 二、神職が他の神社を兼務する場合は左の事項を避けること。
   1、本務に支障を来たすと認められる場合。
   2、神社奉仕に困難と思はれる程遠距離に亘る場合。
   3、神社奉仕に困難と思はれる程多数に亘る場合。
 三、神職が他の職を兼ねる場合左の事項を避けること。
   1、神職の奉務活動に支障を来たすと認められる場合。
   2、神職として好ましくないと認められる場合。
 四、神職は、本庁に所属しない神社又はその他の宗教法人の役職員を兼ねることができない。
   但し特別の事情により統理の承認をうけた場合はこの限りでない。
 五、神職が他の神社を兼ねる場合及他の職を兼ねる場合は、宮司は本務神社の役員、権宮司は本務神社の宮司及役員、祢宜権祢宜は本務神社の宮司の同意を得なければならない。
 六、受持以外の神社又は地域に於いて神事を奉仕する場合は、その該当受持神職の委嘱又は承諾を受けなければならない。但し一個人に対する祈祷霊祭等は此の限りでない。
 七、卜筮、方位、禁厭等をもって、紊りに吉兇禍福を説き、又は無稽の加持祈祷を行ってはならない。
 八、神職は神社界の諸行事に積極的に参加し、相互に切磋琢磨友交を深めて斯道の宣揚に努めなければならない。

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