2017/04/06

「五箇条の御誓文」の神祭式

 4月6日は、明治天皇がいわゆる「五箇条の御誓文」を天地の神様に誓われた日です(ただし当時は旧暦で、3月14日に相当)。
 「天地の神様に誓われた」のですから、詔勅のように何かを命じられたものではありません。当然、神道の形式でお祭りが執り行われたわけです。
 
『太政官日誌』の明治元年3月14日「天神地祇に御誓祭の事」のくだりを見てみましょう。

 以下拙訳。

 三月十四日、内裏の南殿(紫宸殿)において、天地の神様にお誓いするお祭りを執り行われた。公卿や諸侯が集まって、お誓いに添って努力するよう約した。
 
1、正午、群臣が着座。
(公卿と諸侯は母屋、殿上人は南廂、徴士は東廂。皆衣冠の姿だった)

2、塩水行事。
(塩水によるお祓い。神祇輔の吉田三位侍従がこれを勤める)

3、散米行事
(米を諸方にまいて、お祓い。神祇権判事、植松少将がこれを勤める。

4、神祇督の白川三位が着座。

5、白川三位が神おろしの神歌を歌い、神様におりていただく。

6、お供えをあげる。白川、吉田、植松の三名が立って並び、手渡しで次々に運ぶ。事前の点検は神祇輔の津和野侍従。

7、天皇陛下が御引直衣姿で、お出ましになる。当時副総裁だった三条実美と岩倉具視、同じく輔弼の中山忠能、正親町三条実愛らがお供した。
 南面した玉座は右斜めに神座に向かい、平敷で四季屏風を囲われていた。

8、総裁職の三條大納言が御祭文を読み上げる。

9、天皇陛下がお玉串をあげて御拝礼になる。

10、三條大納言、(五箇条の)御誓文を読み上げる。

11、諸侯が、お誓いに対して努力する旨をお約束する。一人ずつまず神拝、つづいて陛下を拝し、それから下がって署名。当日出仕しなかった者は後に参内して署名、合せて767人であった。

12、天皇陛下がお戻りになる。

13、お供えをさげる。あげたときとやり方は同じ。

14、神あげの神歌を神祇督が歌って、神様にお帰りいただく。

15、一同退出。

 御祭文の写

 心に思うのも恐れ多い天の神様、地の神様の大前にて、この年の弥生、十四日を生き生きとして満ち足りた日にて祭礼を行うのに相応しい日と選び定めまして、お願い申し上げますことは、
 今から天の神様のお言葉のままに天下の政治をとり行おうとして、親王や公卿、諸侯や百官の人を率いて、こちらの神様の御座の大前にて誓いますことは、
 最近、悪い者があちこちで荒ぶり武を誇るので、天下が騒がしくなり、人の心も穏やかではなくなっています。ですから天下の全ての人間が協力し、心を一つにして、天皇たる私の政治をお助け申し上げ、お仕え申し上げなされとお祈り致しまして、そのお礼たる捧げものは横に広い山のように、うず高く積み上げて差し上げますのを、どうぞお召し上がりください。
 そして、天下の全ての人間を治めなさり、育みなさり、ひきがえるの這って行くことのできる地の果てまで、白い雲がたなびいているその果てまでも、逆らう者のないようにして下さいまして、遠い祖先の神様の恵みをいただき、永遠にお仕え申し上げるという人々の今日の約束を破る者は、天の神様、地の神様がすぐさま罰しなさるぞと大神様の前にて、誓いのめでたい言葉として申し上げなさることです、と申し上げます。

 御誓文の写

一広ク会議ヲ興シ、万機公論ニ決スヘシ
一上下心ヲ一ニシテ、盛ニ経綸ヲ行フヘシ
一官武一途、庶民ニ至ル迄、各其志ヲ遂ケ、人心ヲシテ、惓マサラシメンコトヲ要ス
一旧来ノ陋習ヲ破リ、天地ノ公道ニ基クヘシ
一智識ヲ世界二求メ、大ニ皇基ヲ振起スヘシ

 我が国はいまだかつてない変革をなそうとしている。
 そこで朕自ら皆に先んじて、天地神明に誓い、おおいにこの国是を定め、全ての人間の保全の道を立てようと思う。皆もまたこの旨に基づいて、心を合せて努力せよ。
 年号月日 天皇のお名前(ご署名)

 公卿と諸候のお約束

 天皇のご命令を思うと誠に広く遠いところまでお考えになっておられ、実に感銘にたえません。今日差し迫った務め、未来のための基礎、この他にございますまい。臣らはつつしんでみ心を戴き、死を覚悟してひたすら努力することで、
み心を安らかにしたく存じます
 慶応四年戊辰三月
  総裁名印
  公卿諸侯各名印

 原文は以下の通り。ただし縦書きです。また、 旧漢字を新漢字にしました。
 御祭文中の< >内は小文字で右寄せで書かれています(宣命体)。

 ●原文

三月十四日、南殿ニ於テ天神地祇御誓祭被為在、公卿、諸侯會同就約ノ次第左ノ如シ

一午ノ刻、群臣著座
 公卿、諸侯母屋、殿上人南廂、徴士東廂
一塩水行事
 神祇輔勤之 吉田三位侍従
一散米行事
 神祇権判事勤之 植松少将
一神祇督着座 白川三位
一神於呂志神歌 神祇督勤之
一献供 神祇督、同輔、同権判事等立列拝送、同輔津和野侍従 点検
一天皇出御
一御祭文読上 総裁職勤之 三條大納言
一天皇御神拜 親ク幣帛ノ玉串フ奉献シタマフ
一御誓書読上
 総裁職勤之
一公卿、諸侯就約
 但一人宛中央ニ進ミ、先ツ神位ヲ拝シ
 御座ヲ拝シ爾後、執筆加名
一天皇入御
一撤供 拝送如初
一神阿計神歌 神祇督勤之
一群臣退出

 御祭文之御写

懸<久毛>恐<支>
天神地神<乃>大前<爾>今年三月十四日<乎>生日<乃>定日<登>撰定<天>禰宜申<左久>
今<与利>天津神<乃>御言寄<乃>随<仁>天下<乃>大政<遠>執行<波無止之天>親王卿臣国々諸侯百寮官人<遠>引居連<天>此神床<乃>大前<仁>誓<津良久波>近<起>頃<保比>邪者<乃>是所彼所<仁>荒<備>武<比天>天下佐夜芸<仁>佐夜芸人<乃>心<毛>平穏<奈良受>故是以天下<乃>諸人等<乃>力<遠>合<世>心<遠>凍一<津仁之天>皇我政<遠>輔翼奉<利>令仕奉給<閉止>請祈申礼代<波>横山<乃>如置高成<弖>奉<留遠>聞食<弖>天下<乃>万民<遠>治給<比>育給<比>谷蟇<乃>狭渡<留>極白雲<乃>墮居向伏限逆敵対者<波>令在給<波受>遠祖尊<乃>恩頼<遠>蒙<利天>無窮仁仕奉禮留人共乃今日乃誓約<爾>違<波>無窮<仁>仕奉<礼留>人共<乃>今日<乃>誓約<爾>違<波受>者<波>天神地祇<乃>忽<仁>刑罰給<波無>物<曽止>皇神等<乃>前<爾>誓<乃>吉詞申給<波久止>申

 御誓文之御写

一広ク会議ヲ興シ、万機公論ニ決スヘシ
一上下心ヲ一ニシテ、盛ニ経綸ヲ行フヘシ
一官武一途、庶民ニ至ル迄、各其志ヲ遂ケ、人心ヲシテ、惓マサラシメンコトヲ要ス
一旧来ノ陋習ヲ破リ、天地ノ公道ニ基クヘシ
一智識ヲ世界二求メ、大ニ皇基ヲ振起スヘシ

我国未曽有ノ変革ヲ為ントシ
朕躬ヲ以テ衆ニ先ンシ、天地神明ニ誓ヒ、大ニ斯国是ヲ定メ、万民保全ノ道ヲ立ントス、衆亦此旨趣ニ基キ、協心努力セヨ
 年号月日御諱

 公卿諸候就約ノ事

勅意宏遠 誠ニ以テ感銘ニ不堪、今日ノ急務、永世ノ基礎、此他ニ出ヘカラス、臣等謹テ 叡旨ヲ奉戴シ、死ヲ誓ヒ、黽勉従事 冀クハ以テ
宸襟ヲ安シ奉ラン
 慶応四年戊辰三月
   総裁名印
   公卿諸侯各名印

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