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2017/06/28

祝詞語彙1

 ここからしばらくは万葉集の歌の中から、祝詞作文に役立ちそうな語句を紹介いたします。といっても、ぜんぶで四千五百首あまりもありますので、巻第一が終わるまででひとつのくぎりにしたいと思います。なお、本文として使用するのはおもに岩波文庫版(新版)です。
 
万葉集巻第一より

【一番歌】

籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち このに 菜摘ます児 家告らな 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて 我こそ居れ しきなべて 我こそいませ 我こそば 告らめ 家をも名をも

〇岡……歴史的仮名遣い注意。「をか」。

〇菜摘ます児……「す」は敬語(助動詞)。ものの本には「軽い敬意をしめす」などとあるが、どうか。敬語の発達とともに、「軽い敬意」と認識されるようになっていったとみるべきではないだろうか。いずれにしても謙譲語ではないので、この「す」参拝者の動作につけくわえることはできない。病気平癒祈願祭祝詞で参拝者が「病みこやす」などと書くのはおかしいし、一般の動詞の「す」とも混同しやすいので注意が必要だろう。本歌の「名告(の)らさね」の「さ」も同様。また、「しろしめす」「聞こす」などの「す」もこれで、すでに一語として認識されていることが多い。


〇家告らな……読みはイヘノラナ。「告ら」は式祝詞で多用されている「宣る」と同じ語。ここでは単に「告げる」という意味にとれる。祝詞でも「告げる」という意味でノルと読んでもよいわけである。

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