きょうは幹部最後の部分です。前述のように、幹部を書きだす前にあらかじめ内容を決めていて、ここで書くのは「最近の神社の状況を踏まえて、じぶんがお仕え申し上げることになった」ことを申す、ということでした。なお、こののち神饌をたてまつる語句につなげようと、考えています。
多少ここで私が赴任する前の神社の状況について、説明しなければなりません。私の前には支部長、かつ他神社の宮司さんが、私が赴任することになる神社の宮司代務者として入られ、一年間ご奉仕されていらっしゃいました。また、さらにその前にいらっしゃった宮司さんとは面識のない状態でした。
すでに述べたように、高天原に始まった修理固成の御言依しより語り起こし、それがつぎつぎに受け継がれてきた旨を申してきまして、恐れ多くも私が引き継ぐことになった……としたい。そして、代々の宮司さんの事績を列挙するととても長大な祝詞になってしまいますので、やはり直前にご奉仕されていた方から引き継いだことだけを申す方が、自然だろうなと思いまして、この部分を書くことにしました。
去年から今年にかけて、支部長さんがいろいろと神社に関することをされていた、ということで、
去年(こぞ)より今年にては某い、万(よろづ)に事執り計り、仕へ奉り
「某い」には、支部長さんの職氏名が入ります。そのような状況でありましたところ……と、このあとへつなげてゆきたいのですが、どうすればよいでしょうか。「て」で切ってつなげるのは単純ですし、いまいち意味がとおらないようです。「事執り計り、仕へ奉」るのは過去のある時点でのできごとを指すのではなく、この祝詞を奏上するときまで「事執り計り、仕へ奉」ってきた、といいたい。
要は「事執り計り、仕へ奉」ることが継続してきていまに至る、という状況を、古語にしたいわけです。すると「仕へ奉れり」「仕へ奉りたり」などが候補としてあげられます。ここでの「り」「たり」は、上にくる語のかたち以外に、違いはありません。そこで「仕へ奉れり」を採用することにします。さらに、ここからつぎの語句につなげてゆくため、「仕へ奉れる間(ほど)に」とします。
つづいて申したい内容は、このたびこちらの神社の宮司として、恐れ多くも私が任じられました、ということ。
此度(こたび)大神等(たち)の是の御社(みやしろ)の宮司(みやづかさ)と、おほけなくも某い、任(ま)けらえたれば
この「某い」は私の氏名です。「職」はまだ入れません。「おほけなく」は恐れ多いという意味。「おほけなく憂き世の民に覆ふかな……」と百人一首の歌の中にもあります。「任けらえ」は時代がくだると「任けられ」となるところ。奈良時代の言い方です。
つづいて、大任であるとかしこみ恐れている旨を申すことにしました。
重き尊き務(つとめ)と畏み恐り奉りて
ここでの「恐り」、変だと思いますか? 上代までは「恐り奉る」という言い方をしていました。「恐れ奉り」となっていったのは、平安時代の中頃からといいます。知っている範囲で、できるだけ古い読み方でと考えまして、「恐り奉り」としました。むろん、「恐れ奉り」はまちがっている、というつもりはありません。
では、きょう説明してきた部分を、つなげてみましょう。
去年(こぞ)より今年にては某い、万(よろづ)に事執り計り、仕へ奉れる間(ほど)に、此度(こたび)大神等(たち)の是の御社(みやしろ)の宮司(みやづかさ)と、おほけなくも某い、任(ま)けらえたれば、重き尊き務(つとめ)と畏み恐り奉りて
これで祝詞全体の幹部が完成しましたので、以下に掲げます。
高天原に事始め給ひし岐美(きみ)二柱(ふたはしら)の大神等(たち)の御言(みこと)依(よ)さしを、天つ序(つぎて)・国つ序と樛(つが)の木の弥継継(いやつぎつぎ)に伝へ奉り給ひし随(まにま)に、
大神等はも、某年と云ふ年、是の〇〇の清き明(あか)き処と、今の〇〇てふ処(ところ)を斎(いは)ひ定めて鎮め奉りしより此方(このかた)
神職(かむづかさ)を初めて、御氏子・崇敬者の諸諸、吾が大神と慕ひ奉り、産土の大神と尊(たふと)び奉りて、時時の御祭の大きも小さきも、厳(いか)しく麗(うるは)しく治(をさ)め奉りて
去年(こぞ)より今年にては某い、万(よろづ)に事執り計り、仕へ奉れる間(ほど)に、此度(こたび)大神等(たち)の是の御社(みやしろ)の宮司(みやづかさ)と、おほけなくも某い、任(ま)けらえたれば、重き尊き務(つとめ)と畏み恐り奉りて
あすはお供えの部分、拝礼の部分、神様にお聞き届けくださいとお願いする部分について、説明してゆきたいと思います。
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