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2017/06/26

宮司就任奉告祭祝詞8 草稿ができたあとに①

 宮司就任奉告祭祝詞の草稿が完成しました。このあと推敲に入るわけですが、推敲の手順については後日改めて説明することにします。きょうはその前段階として、できあがった祝詞について当時、どこに改善の余地があるか、推敲のために読んでみてどう考えたのかを述べたいと思います。

まず全文に目を通して構成やその配分を確かめたあと、それからじっくりと各部分を読んでゆきました。

    挂巻も畏き某神社の大前に恐み恐みも白さく

冒頭部は、このままでよさそうです。

②高天原に事始め給ひし岐美(きみ)二柱(ふたはしら)の大神等(たち)の御言(みこと)依(よ)さしを、天つ序(つぎて)・国つ序と樛(つが)の木の弥継継(いやつぎつぎ)に伝へ奉り給ひし随(まにま)に

 奏上時のことを考え、大祓詞などで慣れている「高天原に神留り坐す皇睦、神漏伎・神漏美命……」とした方が、読み誤る可能性が低くなるなと思いました。このまま自分の創意を活かすか、伝統的な慣れ親しんだ語句でゆくか。また、「天つ序」以降の「つ」の音に注意すれば、このあたりは読みやすいと感じました。

③大神等はも、某年と云ふ年、是の〇〇の清き明(あか)き処と、今の〇〇てふ処(ところ)を斎(いは)ひ定めて鎮め奉りしより此方(このかた)

「大神等はも」の「はも」が問題。ここで文が切れると考えれば「大神等よ」といった詠嘆の意味になりますが、切らずに奏上するとこの部分の主語ととれます。すると後半との兼ね合いで、神様がみずからじぶんの鎮座地を定め、じぶんをお鎮めした、ということになってしまいます。「大神等はも」を削り、主語を明確にするため、創祀当時の神職、氏子崇敬者を挿入するべきかもしれません。また、このままならば「斎ひ定めて」は敬語不足。「斎ひ定め奉りて」とするか「斎ひ定め、鎮め奉り」とするか。

    神職(かむづかさ)を初めて、御氏子・崇敬者の諸諸、吾が大神と慕ひ奉り、産土の大神と尊(たふと)び奉りて、時時の御祭の大きも小さきも、厳(いか)しく麗(うるは)しく治(をさ)め奉りて

 前項の内容から、「神職を初めて……諸諸」をここで削り、③の冒頭に移動、「大神等はも」を削除すればよいかもしれません。移動しても、意味はとおるようです。

    去年(こぞ)より今年にては某い、万(よろづ)に事執り計り、仕へ奉れる間(ほど)に、此度(こたび)大神等(たち)の是の御社(みやしろ)の宮司(みやづかさ)と、おほけなくも某い、任(ま)けらえたれば、重き尊き務(つとめ)と畏み恐り奉りて

この部分、まずは問題なさそうです。

⑥今日を生日の足日と撰び定めて、礼代(ゐやじろ)の幣帛(みてぐら)と、御食・御酒を初めて、種種の味物(ためつもの)を献奉(たてまつ)り、玉串をも捧げ奉りて、事の由(よし)告げ奉り、拝(をろが)み奉る状(さま)を、大神等(たち)の御心に平らけく安らけく聞し食して

 ここは「~奉り」の連続がくどいような気がします。「玉串をも捧げ奉り」と「拝み奉る」のうちどちらかを削るか、両方削るか。

⑦皇御孫命(すめみまのみこと)の大御代を手長の御代の穏(おだ)しき御代と、堅磐に常磐に斎(いは)ひ幸(さきは)へ奉り給ひ

 ここでは「斎ひ幸へ奉り給ひ」としましたが、「斎ひ奉り、幸へ奉り給ひ」の方が奏上しやすいかもしれません。

⑧是の〇〇の郷内(さとぬち)は白すも更なり、谷蟆(たにぐく)の狭度(さわた)る極(きはみ)、塩沫(しほなは)の留まる限、奇(くす)しく妙(たへ)なる大御蔭を弥益益に蒙(かがふ)らしめ給ひ

 奉仕神社の発展を願ってのことながら、「谷蟆の……塩沫の……」は誇大表現かなと思います。そこまでの発展に寄与すべく宮司としてがんばります、ということでよいかもしれません。この部分を削って、氏子区域(文中の〇〇は地名)にお蔭を、と申すだけにするのも、ひとつの見識でしょう。結局じぶん自身の信仰の問題にも関わってきますので、判断に迷うところです。

⑨神職(かむづかさ)を初めて氏子総代神社委員に至る迄に、己が乖乖(むきむき)在らしめ給はず、仕へ奉らしめ給へと、恐み恐みも白す

 ここは「在らしめ給はず」を「無く」に変えた方がよさそうです。その場合、ちょっと舌足らずですので、つぎの「仕へ奉らしめ……」の前になにか語句を補う必要があります。もしくは、あまり見ないかたちですが、「仕へ奉らしめ」を削り、「……在らしめ給はざれと、恐み恐みも白す」とするか。

 ざっとこのようなことを考えたのですが、いかがでしたのでしょうか。奏上しやすい、しにくい語句のつながりは、人によって違うかもしれません。でも、推敲段階でぜひ注意したいポイントです。

 いま説明してきましたように、こうして気になった語句をチェック後、これで完成というところまで、こんどはそれぞれの箇所について検討を重ねてゆくことになります。ですが、ここではこれ以上触れず、次回推敲そのものについてもう少し説明し、宮司就任奉告祭祝詞については終わりにしたいと思います。

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