Translate

2019/06/05

明治以前に北海道に建てられた神社

※長文です。ご注意。

 たまにきかれる「明治時代まで、北海道に神社はなかったんでしょう?」という声。でも、渡島半島、いまの函館や江差周辺にはすでに日本人が相当住みついており、そうなると神社もそれなりにあったのではと思われます。

 では実際、明治以前、いまの北海道にはどれくらい神社が存在していたんでしょうか。CD-ROM『北海道神社名鑑』(國學院大學日本文化研究所)から、創建年代順にあげてみましょう。

【ご注意】
〇正確な年代が不明な神社、例えば保延年間(1135-41)ならば保延元年として順位をつけています。「伝」「再建」「遷宮」「遷座」などの付記してあるものについては、その最初の年代を採用しています。
〇所在地については市町村合併につき、可能なかぎり調べましたが、名称がことなっていることがあるかもしれません。
〇同じ社名(稲荷神社、八幡神社など)でまったく同じ年代の記載がありますが、これはコピーのミスではなく、別な神社です。
〇私の調べにより当然私に文責はありますが、内容についての正確性は保証できませんので、あしからずご了承ください。

 まず元禄期まで、52位までを。

1 船魂神社 (函館市・保延年間 1135-41)
2 亀田八幡宮 (函館市・明徳3、元中9年 1392)
3 八幡神社 (函館市・永享元年以前 1429)
4 太田神社 (久遠郡せたな町大成区・嘉吉元年 1443)
5 函館八幡宮 (函館市・文安2年 1445伝)
6 矢不来天満宮 (北斗市・長禄元年 1457)
7 上ノ国八幡宮 (桧山郡上ノ国町・文明5年 1473)
8 熊野神社 (松前郡松前町・永正9年 1512)
9 三嶋神社 (亀田郡七飯町・天文年間 1532-55)
10 稲荷神社 (桧山郡上ノ国町・弘治元年 1555)
11 川上神社 (函館市・永禄5年 1562)
12 徳山大神宮 (松前郡松前町・天正年間 1573-92遷宮)
12 八幡神社 (函館市・天正年間 1573-92)
13 大中山神社 (亀田郡七飯町・天正4年 1576)※天正3年説あり。
14 愛宕神社 (桧山郡上ノ国町・天正10年 1582)
16 稲荷神社 (函館市・慶長4年 1599)
17 八幡神社 (爾志郡乙部町・慶長6年 1601)
18 鳥山神社 (爾志郡乙部町・慶長11年 1606)
19 根崎神社 (二海郡八雲町・慶長12年 1607)
20 八幡神社 (爾志郡乙部町・慶長20年 1615)
20 北山神社 (二海郡八雲町・慶長20年 1615)
20 八幡神社 (二海郡八雲町・慶長20年 1615)
23 諏訪神社 (爾志郡乙部町・元和3年 1617)
24 八幡神社 (爾志郡乙部町・寛永3年 1626)
25 瀧澤神社 (桧山郡上ノ国町・寛永11年 1634)
26 八幡神社 (函館市・正保元年 1644)
26 姥神大神宮 (桧山郡江差町・正保元年 1644)
28 福島大神宮 (松前郡福島町・慶安2年 1649)
29 湯倉神社 (函館市・承応3年 1654)
30 八幡神社 (松前郡福島町・明暦元年 1655)
31 稲荷神社 (函館市・明暦2年 1656)
32 川濯神社 (函館市・寛文4年 1664)
33 渡海神社 (松前郡松前町・寛文5年 1665)
33 八幡神社 (松前郡福島町・寛文5年 1665)
35 十勝神社 (広尾郡広尾町・寛文6年 1666記録有)
35 白符大神宮 (松前郡福島町・寛文6年 1666)
35 瑞石神社 (浦河郡浦河町・寛文6年 1666)
38 白神神社 (松前郡福島町・寛文7年 1667)
38 月崎神社 (松前郡福島町・寛文7年 1667)
40 八幡神社 (函館市・延宝年間 1673-81)
41 荒神神社 (松前郡松前町・天和元年 1681)
42 山上大神宮 (函館市・天和2年 1682遷座)
42 八幡神社 (函館市・天和2年 1682)
44 泊神社 (桧山郡江差町・貞享元年 1684再建)
45 柏森神社 (桧山郡江差町・貞享2年 1685)
46 荒神神社 (松前郡松前町・元禄元年 1688再建)
47 浅間神社 (松前郡松前町・元禄2年 1689)
48 天満神社 (松前郡松前町・元禄3年 1690)
48 稲荷神社 (小樽市・元禄3年 1690)
48 稲荷神社 (小樽市・元禄3年 1690)
48 小樽稲荷神社 (小樽市・元禄3年 1690)
52 赤神神社 (松前郡松前町・元禄5年 1692再建)

 ここまで道南地方の神社がほとんどで、35位の十勝神社(広尾郡広尾町)、瑞石神社(浦河郡浦河町)、48位の稲荷神社、小樽稲荷神社(すべて小樽市、稲荷神社は同名が二社)だけが例外です。

53 久遠神社 (久遠郡せたな町大成区・宝永元年 1704)
54 厳島神社 (増毛郡増毛町・宝永年間 1704-11)
55 大澤神社 (松前郡松前町・宝永7年 1710)
56 三社神社 (松前郡松前町・正徳2年 1712)
57 稲荷神社 (桧山郡江差町・正徳4年 1714)
58 稲荷神社 (松前郡松前町・享保9年 1724)
59 美国神社 (積丹郡積丹町・享保10年 1725)
60 稲荷神社 (古宇郡泊村・享保15年 1730)
61 稲荷神社 (松前郡松前町・元文5年 1740)
62 狩場神社 (松前郡松前町・延享4年 1747)
63 厳島神社 (函館市・宝暦元年 1751)
64 厳島神社 (古宇郡神恵内村・宝暦2年 1752)
65 稲荷神社 (函館市・宝暦3年 1753)
65 海積神社 (函館市・宝暦3年 1753)
67 川濯神社 (函館市・明和元年 1764)
68 稲荷神社 (積丹郡積丹町・明和8年 1771)
69 稲荷神社 (北斗市・安永元年 1772)
69 神明社 (桧山郡厚沢部町・安永元年 1772再建)
69 少彦名神社 (奥尻郡奥尻町・安永元年 1772-81)
69 住三吉神社 (函館市・安永元年 1772-81再建)
69 瀧廼神社 (桧山郡厚沢部町・安永元年 1772)
74 恵比須神社 (小樽市・安永3年 1774)
75 豊足神社 (小樽市・安永9年 1780)
75 鹿部稲荷神社 (茅部郡鹿部町・安永9年 1780)
75 海神社 (函館市・安永9年 1780)
78 厳島神社 (留萌市・天明元年 1781)
79 厳島神社 (稚内市・天明2年 1782以前)
80 厳島神社 (留萌郡小平町・天明6年 1786)
80 留萌神社 (留萌市・天明6年 1786)
80 苫前神社 (苫前郡苫前町・天明6年 1786)
83 恵比須神社 (増毛郡増毛町・天明8年 1788)
84 塩谷神社 (小樽市・寛政2年 1790)
84 稲荷神社 (小樽市・寛政2年 1790)
84 忍路神社 (小樽市・寛政2年 1790)
87 稲荷神社 (桧山郡上ノ国町・寛政3年 1791)
87 厚岸神社 (厚岸郡厚岸町・寛政3年 1791)
89 山神社 (桧山郡上ノ国町・寛政4年 1792)
90 稲荷神社 (北斗市・寛政6年 1794)
90 丸山神社 (松前郡福島町・寛政6年 1794)
92 山神社 (桧山郡上ノ国町・寛政8年 1796)
92 神山稲荷神社 (函館市・寛政8年 1796)
92 斜里神社 (斜里郡斜里町・寛政8 1796)
95 東照宮 (函館市・寛政11年 1799)

 上記のように、寛政年間までですでに100社ほどになります。元禄までで約50社、寛政まででまた約50社です。ここまで、あいかわらず道南地方での創建が多いですが、日本海沿岸へのひろがりも目につきます。

 今の小樽市内にはここまでで5社が成立(74位恵比須神社、75位豊足神社、84位塩谷神社、稲荷神社、忍路神社。元禄までを含めると8社)、さらに北方の日本海沿岸、留萌地方に4社が生まれました(留萌市内に78位の厳島神社、80位留萌神社、苫前郡苫前町に80位苫前神社、増毛郡増毛町に83位恵比須神社)。また、宗谷岬にほど近い場所に79位厳島神社が創建しています。

 ここまで来ると「北海道の神社はみんな明治以降に建ったんでしょ」というのは、とんでもない偏見であります。といいつつ、私もこんなに多いとは思いませんでしたから、人のことはあまりいえません。

 江戸幕府が倒れるまでは70年ほど、ここからいまの北海道、かつての蝦夷地はロシアによる外圧の状況下、松前藩に任せておけないということで幕府の直轄になります(といっても、各藩に兵士を出すよう命じ、警備させただけのような……)。それから松前藩に返還、また直轄と混乱しますけれど、そんな中でも確実に神社の数が増えていきます。

 つづいて享和元年(西暦ではちょうど19世紀最初の年)から天保末年までの56社をご紹介いたします。

96 浦河神社 (浦河郡浦河町・享和元年 1801)
96 泊稲荷神社 (古宇郡泊村・享和元年 1801)
98 厳島神社 (島牧郡島牧村・享和3年 1803)
98 千歳神社 (千歳市・享和3年 1803)
100 厳島神社 (苫前郡羽幌町・文化元年 1804)
100 厳島神社 (苫前郡羽幌町・文化元年 1804)
100 石倉稲荷神社 (函館市・文化年間 1804-18)
100 厳島神社 (天塩郡天塩町・文化年間 1804-18)
100 厳島神社 (虻田郡洞爺湖町・文化元年 1804)
100 大臼山神社 (伊達市・文化元年 1804-18)
106 三石神社 (日高郡新ひだか町・文化3年 1806)
107 網走神社 (網走市・文化9年 1812)
107 函館水天宮 (函館市・文化9年 1812)
107 八幡神社 (爾志郡乙部町・文化9年 1812)
110 襟裳神社 (幌泉郡えりも町・文化12年 1814)
110 住吉神社 (幌泉郡えりも町 ・文化12年 1814)
110 本別稲荷神社 (茅部郡鹿部町・文化12年 1814)
113 大鳥神社 (寿都郡黒松内町・文化13年 1815)
113 熊碓神社 (小樽市・文化13年 1815)
115 稲荷神社 (寿都郡寿都町・文政年間 1818-30)
115 伊都岐島神社 (寿都郡寿都町・文政元年 1818再建)
115 稲荷神社 (苫前郡初山別村・文政年間 1818-30)
118 厳島神社 (枝幸郡枝幸町・文政2年 1819)
118 稲荷神社 (桧山郡厚沢部町・文政2年 1819)
120 丸山神社 (北斗市・文政3年 1820)
121 比遅里神社 (函館市・文政5年 1822再建)
122 稲荷神社 (寿都郡寿都町・文政6年 1823)
122 稲荷神社 (寿都郡寿都町・文政6年 1823)
124 稲荷神社 (古宇郡神恵内村・文政7年 1824)
124 稲荷神社 (桧山郡上ノ国町・文政7年 1824)
126 稲荷神社 (寿都郡寿都町・天保元年 1830再建)
126 稲荷神社 (寿都郡寿都町・天保元年 1830)
126 稲荷神社 (磯谷郡蘭越町・天保元年 1830再建)
126 渚滑神社 (紋別市・天保元年 1830)
130 澳津神社 (奥尻郡奥尻町・天保2年 1831)
130 川濯神社 (桧山郡上ノ国町・天保2年 1831)
130 岬神社 (稚内市・天保2年 1831)
133 厳島神社 (寿都郡寿都町・天保3年 1832)
133 稲荷神社 (久遠郡せたな町・天保3年 1832)
133 稲荷神社 (久遠郡せたな町・天保3年 1832)
136 稲荷神社 (桧山郡上ノ国町・天保4年 1833)
136 島野神社 (岩内郡岩内町・天保4年 1833)
138 朝里神社 (小樽市・天保5年 1834)
138 稲荷神社 (古宇郡泊村・天保5年 1834)
140 稲荷神社 (日高郡新ひだか町・天保7年 1836)
140 愛宕神社 (桧山郡上ノ国町・天保9年 1838)
140 言代主神社 (久遠郡せたな町北桧山区・天保9 1838)
140 事比羅神社 (久遠郡せたな町・天保9 1838)
144 崎守神社 (室蘭市・天保10年 1839)
145 稲荷神社 (島牧郡島牧村・天保11年 1840)
145 歌島神社 (島牧郡島牧村・天保11年 1840)
147 稲荷神社 (寿都郡寿都町・天保12年 1841)
147 稲荷神社 (寿都郡寿都町・天保12年 1841)
149 稲荷神社 (幌泉郡えりも町・天保13年 1842)
149 稲荷神社 (幌泉郡えりも町・天保13年 1842)
149 稲荷神社 (幌泉郡えりも町・天保13年 1842)
149 潮見ケ岡神社 (小樽市・天保13年 1842)

 道南地方はもとより、日本海沿岸部の各所にどんどん創建されているほかに、オホーツク海側(118位厳島神社・枝幸郡枝幸町、126位渚滑神社・紋別市)や太平洋側(110位襟裳神社と住吉神社、149位稲荷神社の三社・いずれも幌泉郡えりも町)にも、どんどん建っています。それにしても稲荷神社の創建が多い。江戸表でハヤリガミだった時期と比較してみると面白いかもしれません。

 ここまで152社。元禄末年までで約50社、それから寛政末年までの約百年でほぼ50社、さらに天保末年までの約50年で、ほぼ50社が創建されています。

 ここから明治維新までは26年。あと何社、創建されるのでしょうか。

153 蘭島神社 (小樽市・弘化元年 1844)
154 稲荷神社 (久遠郡せたな町大成区・弘化2年 1845)
154 恵比須神社 (古宇郡泊村・弘化2年 1845)
156 稲荷神社 (幌泉郡えりも町・弘化3年 1846)
156 稲荷神社 (幌泉郡えりも町・弘化3年 1846)
158 恵比須神社 (古平郡古平町・弘化4年 1847)
159 厚田神社 (石狩市厚田区・嘉永元年 1848)
160 稲荷神社 (久遠郡せたな町大成区・嘉永3年 1850)
160 恵比須神社 (苫小牧市・嘉永3年 1850)
160 渋井神社 (古宇郡泊村・嘉永3年 1850)
163 熊野神社 (寿都郡黒松内町・嘉永6年 1853以前)
164 稲荷神社 (北斗市・安政元年 1854)
164 大山祇神社 (函館市・安政元年 1854)
166 八雲神社 (桧山郡厚沢部町・安政2年 1855)
167 篠路神社 (札幌市・安政3年 1856)
167 八幡神社 (石狩市・安政3年 1856)
167 発寒神社 (札幌市・安政3年 1856)
167 三吉神社 (増毛郡増毛町・安政3年 1856)
171 厳島神社 (函館市・安政4年 1857移転)
171 八幡神社 (石狩市・安政4年 1857)
173 稲荷神社 (幌泉郡えりも町・安政6年 1859)
173 水天宮 (小樽市・安政6年 1859)
175 稲荷神社 (久遠郡せたな町・万延元年 1860)
175 稲荷神社 (苫前郡苫前町・万延元年 1860)
175 積丹神社 (積丹郡積丹町・万延元年 1860)
178 舎熊神社 (増毛郡増毛町・文久元年1861)
178 白老八幡神社 (白老郡白老町・文久元年 1861)
178 豊川稲荷神社 (函館市・文久元年 1861)
178 氷川神社 (新冠郡新冠町・文久元年 1861)
182 岩内神社 (岩内郡岩内町・文久2年 1862)
183 稲荷神社 (久遠郡せたな町大成区・慶応元年 1865)
183 琴平神社 (古平郡古平町・慶応元年 1865)

 ようやく現在の札幌市に神社があらわれました(167位篠路神社、発寒神社)。道南地方や日本海沿岸部での創建はあいかわらず多いですが、この時期、なぜかオホーツク海沿岸では創建されておらず、太平洋沿岸もわずかです。

 以上、183位の稲荷神社・琴平神社までの184社が明治以前に創建された神社であります。

 参考にしたCD-ROM『北海道神社名鑑』(國學院大學日本文化研究所)の記述には、約600社が掲載されているとあります。ということは概算で、

184÷600=0.30666…

 約31%が江戸時代まで、明治維新以前に創建されたことになります。

 これを多いと見るか少ないと見るかは人によるでしょう。ここでは比較しませんが、たぶん、たとえばおとなりの青森県よりは少ないような気はします。しかし、私自身は思っていたより多い、という感想です。

付記(元号について)
 元としたデータでは西暦のみが表示されていまして、記事にする際、私が元号を併記しました。そこで、改元された年の場合、より新しい元号の方を採っています旨、ご了承ください。

例えば上記、

175 稲荷神社 (久遠郡せたな町・万延元年 1860)
175 稲荷神社 (苫前郡苫前町・万延元年 1860)
175 積丹神社 (積丹郡積丹町・万延元年 1860)

 とあります。

 安政は7年3月18日、改元されて万延元年となっていますけれど、この3社がこの年の3月18日以前に創建されたかどうかまでは、わかりません(単純に月日の記載がない)。ですから、安政7年3月18日以前に建てられたのかもしれないけれど、一括して万延元年としております。

 蛇足ながら、この年の3月3日に桜田門外の変が起きています。小説などで「万延元年3月3日」と書いていることがありますが、それは間違いであります。正しくは、もちろん「安政7年3月3日」であります。

0 件のコメント: