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2019/08/05

桔梗の先触れ

百物語 第五十二夜

桔梗の先触れ


※怪談です。苦手な方はご注意ください。


 桔梗の花じたいは綺麗だと思うんだけどね……。

 夏の朝なんかに、薄い紫色の花を見かけただけで、少し憂鬱な気分になる。

 ときどき、夢で桔梗が咲いているのを見ることがあるのね。

 実家の墓の前に咲いているのを見るんだけど、この夢のあとに必ず誰かが死ぬのよ。

 最初に夢で見たときは、おじいちゃんが亡くなった。寒い日がつづいてた頃で、肺炎になってね。

 桔梗は一輪だけ咲いていて。ふつう見かけるよりも、ちょっと背丈が低かった。

 おばあちゃんが亡くなったときにはね、墓のうしろにびっしり生えてた。長いこと寝たきりで、苦しんでたから見ていられなかった。

 家族じゃなくても見るんですよ。

 勤めている会社の役員が亡くなったときは、七輪か八輪か……。風に揺れてたのね。小さい会社だけど、役員さんと親しいわけじゃなかったんだけど、なぜか見た。

 たまにエレベーターで会うと声をかけられる程度だったし、亡くなったときのことは、詳しくは聞いていません。

 息子の友達が亡くなったときは、桔梗は一輪だけで、なぜか墓の真上に咲いてた。墓から生えてるみたいに。これは真夏のことで、かわいそうに川で溺れたと聞きました。

 夢の中で桔梗がどう咲くのか、何本生えているのかが、亡くなる人とどうかかわってくるのかは、全然わからないの。

 ただ、桔梗の夢を見ると、人が亡くなるってだけなんです。

 不吉なんだけど心の準備はできる、かな。

 たぶん、自分の気持ちにどの程度影響するのか……ってことだと思ってるんですけれども。

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