百物語 第八十一夜
祖母現る
※怪談です。苦手な方はご注意ください。
お祖母ちゃんが亡くなって、十日くらいたった頃のことです。
わたしは定期テストが近かったので、勉強していたんです。
夜遅くまで……深夜、二時くらいだったかな。
教科書の内容をノートをまとめてたら後ろで、ギイーッと、ドアの開く音がしたんです。
わたしの部屋、二階なんです。ふだん、夜はわたししかいません。
だれかが階段を昇ってきたら、足音で分かります。
集中してたから気づかなかったのかな、だれだろうって振り返ってみたら、死んだはずのお祖母ちゃんが立っていたんです。
生きていた頃よりも、かえって元気そうで、和服姿でした。
いえ、死に装束ではありませんでした。ちょっと改まったときに着るような……はい、じぶんの着物でした。
わたし、びっくりして……でも、疲れてるからかな、って、いちどノートの方を見たんです。
幻覚かもしれないって。
それで、もういちどふりかえってみたら、もうお祖母ちゃんはいませんでした。
ただ、ドアが開いてた。
古い家だから、とうとうガタがきちゃって勝手に開くようになったのかなって立ち上がり、閉めに行ったんです。
すると、玄関の方で物音がしました。
戸を開けて……だれかが出ていく音。
そして、わたしはもう気づいていました。
お祖母ちゃんのにおい……好きだったお香のにおいが、あたりに漂っているのを。
階段をおりて玄関に行ったところ、鍵がかかっていました。
両親の寝室をのぞいてみると、ふたりともぐっすり眠っていました。
兄弟姉妹はいません。
やっぱり、お祖母ちゃんだったんだ。
なぜ声をかけなかったんだろう……今でも、ちょっと後悔しています。お祖母ちゃん子だったので。
その後、お祖母ちゃんが現れたことはなかったので、なおさらです。
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