万葉集巻第一より
【十八番歌】
三輪山を 然(しか)も隠すか 雲だにも 心あらなも 隠さふべしや
〇雲だにも……せめて雲だけでも。
〇あらなも……「あり」に「なも」がついた形。
〇隠さふべしや……「隠す」「ふ」「べし」「や」という語構成。「や」は反語。(雲がそんなに三輪山を)隠しつづけてよいものか。
【補足】
「だに」は、上代においては「(せめて)……だけでも」「……なりとも」の意味だったが、のちに「……さえ」という意味でも使われるようになった。
「あらなも」の「なも」は終助詞。上に動詞や動詞のような活用をする助動詞の未然形がきて、「……てくれればいい」「……てほしい」という意味。本歌では「雲だにも 心あらなも」で「せめて雲だけでも心があってほしい」。終助詞・係助詞の「なも」はのちに「なむ」となる。すると、これまであげたものの他に、①完了の助動詞「ぬ」に推量の助動詞「む」がついた形、②ナ変動詞の語尾に推量の助動詞がついた形があって、まぎらわしいので注意が必要。
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