百物語 第十一夜
薩摩焼の土瓶
※怪談です。苦手な方はご注意ください。
昔、吉原に洲崎卍という妓楼がありました。
この妓楼に所属する、ある遊女についていたカムロが、誤って土瓶の蓋のつまみを壊してしまった、ということがありましてね。
ええ、カムロは遊女の世話をする女の子ですな。漢字で禿と書きます。
その土瓶は遊女がとあるなじみの客から贈られたもので、値の張るもの。薩摩焼だったそうです。
遊女は大いに怒り、かつ罵って、ついには煙管を取って、カムロをビシッと打ちつけたのです。
するとカムロは、よほど打ちどころが悪かったのか、そのまま死んでしまいました。
以後、その妓楼では土瓶を買うたびに、蓋のつまみがみな一夜のうちに失くなってしまうようになったそうです。
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